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来週の日曜の午前中に行われるセンの読書会に向けて、準備しようと思う。とりあえず、ダンボールのなかを漁ったりしながら、手許に揃えてみたのはこんな文献群。指定文献は不平等の再検討。



センを勉強するのに、いくつかの目標を立てたいと思う。とはいえ、私はこの分野の専門的トレーニングを受けていないので、文献の選択は間違ってるかもしれない。その点はご教示いただければ、幸いである。

センを取り扱うときに、何が重要かと言えば、1990年代以降の世界的な人権概念の相場になった人間の安全保障の考え方の背景に、ケイパビリティ論があることだろう。現実世界を理解する上ではこことの関連性を押さえておきたいのだが、そのためには別様の準備が必要になるだろう。ただ、これは最終的には最重要論点1である。

次いで、そもそもセンは理論家なので、理論の中で彼をまずどう理解すべきなのか、というところからスタートすべきではないかと思われる。その準備作業として必要なのが厚生経済学の中に彼を位置付けることで、これが第2-1の論点である。この領域では鈴村後藤のセン本が有名。ただ厚生経済学そのものを学ぶ必要もある。幸いこの分野は、セン、アローとともに鈴村が最高のハンドブックを作っていて、これに当たるという方法がある。鈴村自身の著作も少し集めたが、今回はそこまでは行けない。

厚生経済学および社会選択論の素晴らしいところは、先行研究の踏襲がちゃんとされているところではないかた思う。当たり前ではないかと言われるかもしれないが、むしろ、そうではない分野の方が多いのではないか。そういう意味ではセン以降の展開も重要で、個人的にはヌスバウムも気になるが、ここでは日本においては鈴村の後継である後藤玲子の業績が重要だろう。これが第3の論点である。

ただ、理論に関連すると、センの踏破して来た道は、あくまで学際的なので、経済学以外との関係も考える必要がある。この意味では経済学と倫理学も参考になりそうな気がする。これはもちろん後藤本を読む前提にもなるけれども、2の派生問題とも思えるので、論点2-2としたい。

こんな感じで見取り図を作ってみたが、大丈夫だろうか。
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みなさま、明けましておめでとうございます。

昨年は、大阪という新しい環境の中で、いろいろなことを学びました。自分が勉強を持続的に行う環境を十分に作り上げることは出来ませんでした。しかし、それよりも、新しい実践の現場に出ていきました。関東の現場を十分に知っているわけではありませんが、大阪ではなんというか、実践知というか、身体知というものに根差した現場の熱というのを学びました。そして、そういう活動は今年も続けていきたいと思っています。

9月末に自転車で怪我をしてしまったこともあり、後半は生活を回すだけでいっぱいいっぱいでしたが、これからその分、行き詰っていた仕事を挽回していきたいと思います。今年こそは本をまとめたいと思います。第5章と第3章を少し書き直す必要があるのですが、春休みを使って3月いっぱいには書くつもりでおります。その他、新しくいただいているお仕事もありますので、そちらも一生懸命やらせていただきます。

皆様、本年もどうぞよろしくお願いします。

金子 拝
夏ごろに人事院の吉田さんから『公務員給与法精義』をお送りいただいておりました。ありがとうございます。この本は900頁を超える大著で、価格も14000円と高価ですが、人事の専門家は必携と言ってよいと思います。少なくとも、賃金問題を考える必要がある人は必ず手元に置いておいた方がよいです。このエントリは本当にニッチな層に語り掛けています(笑)。

この本は、そのほとんどが制度の説明です。しかも、公務員ですから、どの法律にもとづいてどういう制度になっているのかということが詳細に書いてあります。要は逐条解説による条文読みなので、こういう法律系の書かれたものに慣れていない人にはつらいでしょうし、さらにその内容は人事に通じていないとよく分からないはずです。その反面、一個一個の制度を精密に読むには、これを超えるものはありません。逆に言うと、人事院勧告は民間を意識しますから、時々、民間企業との比較をする記述も含まれています。ただ、一個一個の制度にどういう意味があるのかということを深く考察するというよりは、条文がどうなっていて、そこにはどういう意図が込められているかということが書かれているので、第1部の総説をざっと読んだら、第2部はご自分の関心のあるものを読むと良いと思います。

私は人事院に一度、呼ばれてお話ししたのですが、そのときの日本の民間賃金と賃金論の展開を「近代日本における賃金体系の成立とその展開」『人事行政』2017年3月という形にまとめております。人事院でお話しするんですから、完全プロ仕様でまとめました。この領域でこういう形でまとめたものは、私としても初めてですし、おそらく二度とやりません。もし、ご関心がある方は、ぜひ手に取っていただければと思います。膨大な手当に関しては、これを読んでも理解できませんが、俸給などの考え方については何か参考になるところがあるのではないかと思うので、こういう本を読む際の補助線に利用していただければ、幸いです。
白桃書房の編集の方から『人事の成り立ち』を送っていただきました。ありがとうございます。

このいくつかの本を取り上げて、著書からそのリプライをもらうという形式はなかなか面白く、アベグレン先生なんかはもう鬼籍に入られているので、こういう企画はもう出来ないでしょう。日本の人事を理論的に考える上でのヒントはたくさん詰まっている本です。というか、この本を並べて、現代に繋がる主要な論点を並べるという力業を成功させたのは、ほぼ企画の段階で勝負が決まったんじゃないかなと思いました。

ただし、歴史の本として読むには、ちゃんと勉強しているのか、怪しいところが多いです。特に、近世日本の職業と身分の関係が全然理解されていない。しかしですね、何というか、こういう言い方をすると、語弊を生むかもしれないのですが、プロのように厳密に考証する必要はなく、ロジカルに日本の人事制度とはどういうものかを考察出来れば、それで十分だと思います。おわりにで、海老原さんがジャーナリズムからアカデミズムに踏み込むことも考えたが、ジャーナリズムから抜け出すことは出来なかったということを書いておられます。私はむしろ、そこがよいのではないかと思いました。

アカデミズムよりジャーナリズムの方が狭い専門分野から飛びやすいですし、さらには現象としての「人事」は方法を選ばず多様な面をもって存在しているので、このように様々な角度から見るというのはやりやすいですね。こういう本が役に立つのは、間違いなく現場で人事に携わっている方です。しかも、人事というのは、別に人事部じゃなくても構わないので、広く「評価」をしている人も含めていけば、ほとんどのビジネスパーソンに当てはまるのではないでしょうか。

こういう本は一人で読むよりも、何人かでそれこそ一つの章ずつとかでもよいので、自分の会社での経験などを語り合いつつ、読書会なんかをやるととても有意義になるでしょう。その点、ビジネススクールなんかでテキストにするには最適で、私自身は関西に来てしまったので、継続できなくなってしまいましたが、まだ今年も継続していたら、これをテキストにしたと思います。

松沢裕作さんから新著『生きづらい明治社会』をいただいておりました。すっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。遅ればせながら、一読して、これは素晴らしい本だと思ったので、ぜひご紹介したいと思います。

個人的には、ツイッターでいつも愚痴をこぼしている松沢さんが、ついに著書にまでその気持ちを込めたというところでしょうか。こう書くといかにも揶揄してるように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。この生きづらい現代社会を頑張って生き抜こう!というシンドイ話ではなく、シンドイものはシンドイ、というところがいかにも松沢さんらしいです。まさに「自分の中に歴史を読む」ですね(阿部勤也先生と松沢さんはだいぶ違いますが)。でも、ここは社会政策、そのまた根幹の社会問題を理解する上では、一番大事なことなんですね。だから、私もあえて触れてみました。

大体、今までの本は、立身出世に勝ち残っていた人の話か、そのルートに乗れずに塗炭の苦しみをばねに抵抗運動した人の話か、いずれにせよ、とてもギラギラした人たちの話が多かったわけです。そこにあえていかない。というか、今でもそういうタイプの運動家はたくさんいますが、松沢さんはそういうところとは合わないだろうなと私なんかは思います。

ただ、全体的に、松沢さんは安丸先生の通俗道徳論に現代にも通じるような明治の生きづらさを見出していると思うのですが、私は個人的には圧倒的に組織の生きづらさではなかったかと思います。そこは松沢さんは「家」制度として少し描いているんですが、農村の生きづらさ、地域コミュニティ(共同体)の生きづらさ(その裏返しとしての都市の解放感)のようなものが実は現在でも大きなものとして存在していると私は考えています。そこのところはそのうち、松沢さんに聞いてみたいですね。

とにかくこの本は社会史的な背景とか、基本的な知識を得るにも、良いので、社会政策の歴史を学びたいという人には、まず、これは読んだらと自信を持ってお勧めできる一冊です。あと第一線の歴史学者がいろんな先行研究を踏まえて書いているわけですから、こういうのは新しい世代のものを読むと新鮮だと思いますよ。図書館にも入れてもらうかな。