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大原社研の大先輩、五十嵐仁先生から『対決安倍政権』をいただきました。いつもありがとうございます。私は五十嵐先生とは思想信条も、性質も全然異なるのですが、だからこそ、多くのことを学ばせてもらいました。まだ身についていないので書くのも恥ずかしいですが、講演の方法、特に時間の進め方などです。

『対決安倍政権』とはまたセンセーショナルなタイトルで、五十嵐先生の読者層の共産党系や左派の人達には響くのでしょうが、それだけではもったいない。中身はオーソドックスなことが書かれています。とくに、3章と4章の内容は社会保障と労働政策(あえて言えば社会政策)の基本的な論点を勉強するにはよい素材だと思います。

ただ、同時に基本的人権への無理解を批判するだけでは足りなく、島薗進先生が議論されている国家神道と自民党との関係を正面に据えて、安倍政権の拠って立つところがどこにあるのかということを押さえる必要があるのではないかと思います。特に、憲法と教育に関しては。私自身は、政治思想という次元とは関係なく、モダナイズされた神道には懐疑的です。

あと、労働運動の再生に闘争を持って来るのは、私は長期的にうまくないと思っています。なぜなら、そういう行き方はかえって逆説的に安倍政権のような「極」があるときこそ力を得るからで、それでは安倍政権とやっていることが同じなのです。なぜ、安倍政権が1990年代に文部省と手打ちし、組織率も低迷する日教組を目の敵にしないといけないかといえば、闘争主義は自分を強く見せるためには強力な敵が必要だからです。安倍政権の日教組評価は過大評価なのです。

もう一点、私は五十嵐先生とは問題意識が逆で、日本に本当の保守政党がないことが問題だと考えています。そのことはちゃんとした革新政党がないこととも関係しています。日本の場合、西洋輸入をベースにした社民派ないし革新派と、近代以降の国学などを中核にした保守派とがゆるやかに存在すれば望ましいと思うんですがね。もっとも、日本は思想的にファジーな国だからこそ歴史的にイデオロギー闘争や宗教闘争がほとんどなかったわけで(20世紀になってからが例外的ですが、それも今はほぼなくなりました)、政党が思想をベースにするとそういう良さが失われてしまうかもしれません。
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