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友人の酒井泰斗さんの協力によって単著執筆支援研究会が始まりました(いつの間にか単著執筆準備作業進捗報告会になっていた)。三つが並行して始まっているのですが、とりあえず、私のものが見切り発車で先日、第一回が行われました。酒井さんのは論文だからというよりは、もうちょっと違う狙いがあるような気がするので別枠で、カウントしませんでした。

私の報告は「社会政策における医療」というタイトルでしたが、研究会でそもそも「衛生」の方がよいんじゃないかと指摘されたとおり、衛生行政から始まった医療と社会政策の関係を概観するという試みを行いました。取り組みを始めて、なるほど、この分野はすごく重要だなという思いと、これは自家薬籠中にするにはなかなか時間がかかるなという印象を持っています。面白いなあと思ったのは、日本の近代医療史の中では大きな足跡を残されたのは川上武先生、それから、佐口卓先生、野村拓先生がいらっしゃいますが、彼らは戦後の革新運動の中にいたんだなというのが実感されたことです。そして、1968年革命を通じて、フーコーもある意味では何か通底する問題意識を持っていたように思えたことです。医療まわりは、生命を媒介にいろんなところに展開していくので、こういうところとくっつけた方がいいなというアイディアもいくつかあるのですが、それはまだもうちょっと先にお話しすることにしましょう。

研究会は、内在的に、どうやったらまとまるかという点から議論していただいたので、今まで数年間、一人でバラバラにやって来たことが課題として少し整理された気もします。というか、最初の構想とは異なって、自分の中ではブラックボックス化していた二つ目の章の構成を考えるヒントをいただいたようで、その線で作業を進めたいと思っています。なぜ、こんなことをわざわざ書くのかというと、これは酒井さんとしても新しい企画で、こういう途中過程を私なりに記録したり、感想を残しておくのも意味があるかなと思ったのです。

私も藤原さんと畠中さんという二人と一緒に、大原社会政策研究会という研究会をここ2年間やって来ました(というか、藤原さんと畠中さんの情熱に引っ張ってもらっているのですが)。この研究会はややもすると、大学院生活のなかで閉塞しがちな若手を支援するために開いたものです。個人的には、もっと継続的にこの研究会を利用してもらって伴走型の研究会になるものと思っていたのですが、どうも継続的に出席するのが難しいからか、スポット的な報告が多いのです。もちろん、それでもその時点で自分に必要な使い方をしてもらっているのでそれで構わないのですが、もうちょっと連続的にやるとなると、別の仕組みが必要なんだなということも分かりました。今回の単著執筆支援研究会というのは、そういう意味で面白い仕組みだなと感じています。

アドバイスされる側に立って研究会をやっていただくと、よく考えてみると、いつも自分が言っていることがそのまま当てはまったりして、ああそうだよなあと唸ることしきりです。やっぱり、言うのとやるのでは違いますねえ。一番のポイントは、まとめるためには何を切り捨ててどこに集中するのかということで、とくに期限を切ったら、その中で何をやるのかということです。しかし、実際に自分が何かを調べ始めると、面白くなってどんどん調べるのを止められなくなってしまいます(不安になってという人もいるでしょう)。それはやらなくてもいいんじゃないか(次に持ち越す課題にするということも含めて)というのは大事な視点で、ここは人から指摘されないと分からないというか、見失いがちですね。

もちろん、やらなくてもいいというアドバイスを全部、受け入れる必要はないんですが、そのときにはそれに対してはなぜ入れなければならないのかということを説明する必要があります。そのプロセスは案外重要です。削れないというのは、自分にとっては重要だということで、つまりは核の部分を説明することになるからです。私の場合、社会運動を入れなくても、政策に主軸を置けば、いけるのではないかという話があったのですが、どうもことに戦後については政策形成に大きな影響を与える主体であった社会運動抜きにも出来ないと思っていて、そこで対象(何をもって社会政策と呼ぶのか)と主体の関係の説明という問題が出てきました。何を対象とするのかは数年前、学会で別の報告をしたときにも出てきた質問でした。

しかし、ここまで書いてて思い出したけど、6年前に書いた「日本における「社会政策」概念について」とも決着をつける必要があるだろう。
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