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萬年先生に振られていたのに、答えるのを忘れていました。法政大学大原社会問題研究所を少し宣伝しますね。うちの研究所は1919年に大原孫三郎によって創立されました。1919年というと、ILOが創立された年です。ILOというのは、労働者、使用者(資本家)、政府のうち、それぞれから代表を出して、国際会議をして、国際的な労働基準を作って行こうという機関です。日本は最初の年から参加していますが、その最初の年の労働者代表を出すので、ものすごくもめました。途中はすっぽり、省略しますが、このときのゴタゴタで高野岩三郎東大教授が東大を辞めることになり、その高野博士を所長に迎えて作ったのがわが大原社会問題研究所です。

うちの研究所は中興の祖であった二村一夫先生の方針で、開かれたアーカイブズということでやっておりまして、研究者に限定せずに、どちらの方でもいらっしゃることが出来ます。ただ、何分、古い資料を扱っているので、保存状態が悪かったり、今、まさに整理中の資料についてはお見せすることは出来ません。とはいえ、戦前期の協調会が持っていた文献資料なんかは閲覧が可能です。私は月曜日と水曜日には原則的に出勤していますので、声を掛けて下されば、ご案内もできます。ぜひお運びください。

とはいえ、うちは関東の中でも相原かめじろ台からバスで15分くらいという山奥にありますので、都内の人も一日仕事になってしまいます。まして地方からだとちょっと大変ですね。あと、食事は学食しかありません。近年の文献だったら、もちろん、東京都労働資料センターや日比谷図書館、JILPTの図書館が便利です。あと以外にも女性に関するところだったら、東京ウィメンズプラザもいいかもしれません。青山学院大学の目の前で場所がよいので、美味しいお店もいっぱいあります。気分を変えたいなら、江の島にあるかながわ女性センターも私は好きです。ただ、江の島は少し離れないと、ご飯を食べるお店は高いかな。古い文献なら大原社研、戦後の労働資料だったら飯田橋の東京都労働資料センターとJILPTがよいと思います。JILPTより飯田橋の方がアクセスはしやすいかな。

西日本の方はぜひ谷合館長が頑張っている大阪のエル・ライブラリーもご利用ください。
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お会いしたことのない方ですが、大河内満博さんにツイートで言及していただきました。

@junposha 『日本の賃金を歴史から考える』を一気に読んでしまった。普段から労働法の歴史を意識しながら講義をしている私にとって、労働法の周縁部分である賃金論を歴史的視点から知ることは非常に興味深かった。歴史を振り返って今を考える、やはり「温故知新」なのだと改めて思う。


社労士関連で講師をなさってるんですね。そこで歴史を意識しながら、法律を教えているそうです。もうピッタリ、私と問題意識を共有していただきました。法の考え方はところどころ、入っています。私なりに生ける法と制定法の両方を意識しています。

濱口先生は紹介文に雇用の全体と書いて下さったんですが、実はそれはことの半分です。重要なのは、雇用と対比される請負も総合的に把握したことです。もちろん、濱口先生はそんなことは承知で、帯文としての分かりやすさから雇用の全体と書いて下さっているわけですが。戦前の雇用と請負を見ると、属人給と出来高給(請負給)の関係が分かります。これは第1章を読むと、分かります。ここのところは大河内さんには響いてくださったみたいです。続いて、こんなツイートを呟いておられます。

【労働基準法】平均賃金の最低保障額を定める労基法12条1項1号に出てくる「出来高払制その他の請負制」という部分は、民法上の請負契約とはほとんど関係ない。出来高払制と請負制とは同じ意味だと考えておいてよい。出来高賃金のことを請負賃金と呼んでいた戦前の名残にすぎない。


賃金統制の一部が労働基準法に反映されたことは、金子さん本人から孫田先生聞いていて、私もそれを伝承しています。この記述は賃金臨時措置令、賃金統制令、労働基準法に引き継がれたんですね。95頁にこんな記述を入れておきました。

基本給という言葉が最初に使われたのは1939(昭和14)年に施行された賃金臨時措置令の第三条である。「本令に於いて基本給と称するは定額賃金制に於ける定額給又は請負賃金制に於ける保証給若(もしく)は単位時間給」(原文はカタカナ,旧字)と定義されている。1939年といえば日中戦争中で当然,職能資格給の登場以前であるが、要するに当初,基本給は単なる固定給を意味していたのである。非専門家がこの条文を正確に理解する必要はないが,ついでなので解説しておこう。請負賃金は出来高賃金と同じ意味である。


編集で字が変えられてるな汗。正確は精確の間違いです。意味が違います。気が付かなかった。それにしても、こんなマニアックなところをよく引き受けてくださいました。ありがとうございました。ちなみに、常用、常傭と日雇、日傭ないし臨時という使い方も昔からの名残りですね。
萬年先生からご紹介いただきました。ありがとうございます。

同一労働同一賃金の話のところで、いきなりマタイ書20章のエピソードを出すのは結構、インパクトがあるみたいですね。日本では聖書なんてそんなに読まれていないと思っていたので、どうかなと思っていただのですが、何人かからはよい反応をもらいました。よい反応というのは驚いた、ということです。この話、有名なのは後の者が先になり、後の者が先になるという警句ですね。

それにしても、やっぱり萬年先生の中では、僕は佐々木輝雄先生を再紹介した人なんですね笑。萬年先生の貼ってくれたリンクもいいんですが、本人としては一番力を入れて書いた佐々木輝雄論は、こちらになります。佐々木先生は職業訓練の歴史研究で深い業績を残した方です。もともとの出自は教育史というのも面白い。

次の次くらいには人材育成と教育を両方視野に入れた近代史も書きたいなあ。