連合総研からDIO302号をお送りいただきました。ありがとうございます。早速、濱口先生にも紹介されていますが、なんともマニアックな日教組からの委託研究に注目されています。何をやっても日教組が政治問題に巻き込まれてしまうというのは、非常に不幸なことでもありますが、どうしてそんなことになってしまうのか、たぶん、誰かがちゃんと解明する必要があるでしょう。問答無用の相手を攻撃、自己主張というプロセスは右を向いても左を向いてもうんざりするものがあります。そうすると、本当に重要な教職員の労働時間問題が隠れてしまうのです。これは教職員を公務員、日教組を自治労や国公連合などに置き換えてもまったく同じことが言えます。

ただ、今回のDIOのなかでは私としてはやはり特集の介護離職問題が重要だと思います。ワーク・ライフ・バランスは出てきたときには子育て支援というところで始まったわけですが、今やフェーズを変えて、介護離職問題に焦点を当てています。この問題を推進してきた佐藤先生も2000年代後半から2010年代に入って大きくかじ取りをしました。介護問題は企業の中核である男性中高年層がターゲットになるから、企業も取り組まざるを得ないということですね。世間に浸透して行くのはもう少し先でしょうか。
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連合総研元副所長の龍井さんからの紹介で、現代の理論に寄稿することになり、「組織の持続可能性から賃金を考える」を書きました。結果的に、今のところ、私が賃金問題をどのように捉えているかの見取り図になったような気がします。ただ、書いている本人でさえそう思うのですが、これ、難しすぎやしませんかね。分量が決まっているとは言え、全体的に説明が足りず、少し不親切になっている気がします。

後半部分の地域、社会的サービス(ないし社会福祉サービス)と賃金の関係、それから思想から見た賃金(とくに労働証券の考え方、タイムダラーの考え方)などはこれから掘り下げていかなければならない話題ですね。ただ、震災この方、私は生活は地域にあり、地域のことは地域で決めるべきであると考えていて、それならば、学者はまちづくり関係の研究者(といって、それ自体が学際的ですが)としてしか参加できないのではないかと感じています。もちろん、国家レベルで決めている政策(法律)はあるわけで、それにはそれで関わる必要があるのですが。。。

大原社研の大先輩、五十嵐仁先生から『対決安倍政権』をいただきました。いつもありがとうございます。私は五十嵐先生とは思想信条も、性質も全然異なるのですが、だからこそ、多くのことを学ばせてもらいました。まだ身についていないので書くのも恥ずかしいですが、講演の方法、特に時間の進め方などです。

『対決安倍政権』とはまたセンセーショナルなタイトルで、五十嵐先生の読者層の共産党系や左派の人達には響くのでしょうが、それだけではもったいない。中身はオーソドックスなことが書かれています。とくに、3章と4章の内容は社会保障と労働政策(あえて言えば社会政策)の基本的な論点を勉強するにはよい素材だと思います。

ただ、同時に基本的人権への無理解を批判するだけでは足りなく、島薗進先生が議論されている国家神道と自民党との関係を正面に据えて、安倍政権の拠って立つところがどこにあるのかということを押さえる必要があるのではないかと思います。特に、憲法と教育に関しては。私自身は、政治思想という次元とは関係なく、モダナイズされた神道には懐疑的です。

あと、労働運動の再生に闘争を持って来るのは、私は長期的にうまくないと思っています。なぜなら、そういう行き方はかえって逆説的に安倍政権のような「極」があるときこそ力を得るからで、それでは安倍政権とやっていることが同じなのです。なぜ、安倍政権が1990年代に文部省と手打ちし、組織率も低迷する日教組を目の敵にしないといけないかといえば、闘争主義は自分を強く見せるためには強力な敵が必要だからです。安倍政権の日教組評価は過大評価なのです。

もう一点、私は五十嵐先生とは問題意識が逆で、日本に本当の保守政党がないことが問題だと考えています。そのことはちゃんとした革新政党がないこととも関係しています。日本の場合、西洋輸入をベースにした社民派ないし革新派と、近代以降の国学などを中核にした保守派とがゆるやかに存在すれば望ましいと思うんですがね。もっとも、日本は思想的にファジーな国だからこそ歴史的にイデオロギー闘争や宗教闘争がほとんどなかったわけで(20世紀になってからが例外的ですが、それも今はほぼなくなりました)、政党が思想をベースにするとそういう良さが失われてしまうかもしれません。
来週の火曜日、法政大学多摩キャンパスで第8回大原社会政策研究会を開催します。今回は東京学芸大学の松川誠一さんに「ひとり親家庭に育つ高校生の進学アスピレーションは低いのか」をご報告いただきます。

日時 2015年3月10日(火) 15時20分〜17時20分
場所 法政大学多摩キャンパス EGGDOME 5階 研修室1・2(バスが着いたところにたっている建物)
報告テーマ 「ひとり親家庭に育つ高校生の進学アスピレーションは低いのか」
報告者 松川誠一(東京学芸大学教育学部准教授)

教育と福祉の境界領域で、社会政策の研究としてもとても重要な内容だと思いますので、ぜひいろいろなディシプリンをお持ちの方と議論をしたいと思います。皆さん、ふるってご参加下さい。なお、終わった後に報告者を含めた懇親会を行いますので、そちらもぜひ(私は岩手に向かうので、懇親会は参加できませんが)。

どうぞよろしくお願いします。