さてさて、いろいろと課題を抱えているんですが、こちらも熱いうちに書いておかないと忘れるんで、書いておきましょう。

稲葉さん、ご紹介の乾彰夫『日本の教育と企業社会』大月書店、読みました。出版社から分かるようにゴリゴリの左派ですが、それはまぁ、置いておきましょう。結論から言うと、読んで損したとは思わなかったけれども、読んだからといって取り立てて得をしたわけでもなかったです。私にとって面白かったのは序章、要するに、業界地図がちょっと分かったなあ、ということです。

本文は別に私は読む必要ないでしょう。ただ、乾さんの議論はかなり左派の労働問題研究者の議論を正確に捉えて、ご自分なりに深められています。職務給と職能給の対立、実はその裏に年功賃金(左派の言葉でね)があるんだ、という議論は、門外漢には分かりづらいと思いますが、正確に捉えています。本田さんとは全く違います。その限りにおいて、人に勧めてもいい本だと思います。が、そもそも、左右を問わず、今の私は賃金制度論を人事・労務からだけの視点で語ることに違和感を持っているので、技術革新の中で生産システムがどう変わったか、その背景にはどういう経営手法があったのか、そういう観点がそっくり抜け落ちてる議論はダメだと考えています。ここに出てくる田中慎一郎さんにしても当時としては相当な理論レベルの労務屋さんですが、労務屋さんが考える職務分析の意味と現場が求める職務分析の意味が果たして同じであったかどうか、そのあたりは掘り下げる必要があるでしょうね。まぁ、これは乾さんだけじゃなくて、彼の拠って立つ労働問題研究全般に対しての感想です。が、この段落の話は、はっきり言って瑣末な議論です。乾さんの議論は労働の議論としては相当のレベルにありますが、なんでここでこんなことが論じられているのか、あまり意味があるとは思えない。

この本は中間理論的な本です。一見、私が上で書いたような箇所を読むと、細かい実証的な本のように見えますが、実際には最初のところで作った大枠にそって、個別論点を詳しく書いているだけです。そして、この本は不思議なことに教育の議論が弱い。そこも謎で、じゃあ、なんであんなに労働の部分詳しいの?という感じです。そして、詳しいんだけど、ホワイトカラーの話とブルーカラーの話が実はゴチャゴチャになっている。それは一元的能力主義と多元的能力主義を対立的に捉える図式の論拠がそもそも怪しいんじゃない?と疑わせる十分な根拠になり得ると思います。思いますが、それもさしあたり、私にはどうでもいい。読むべき先行研究をクリア、ということで。そこが大事。経済審議会の答申の検討は不十分だと思います。考えを深めた本というより、よく勉強した本という印象でした。

ちなみに、乾先生は1993年に「法政二中・高生生活調査アンケートの結果にふれて」という論文(?)を書かれているのですが、私、その時期、中学に在学してましたよ!だが、アンケートを書いた記憶はない。そのとき、アンケートを受けていたら、いい落ちになったのに。残念。

スポンサーサイト
コメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事へのトラックバック