書きかけてたエントリ。面倒臭くなって放っておいたのですが、濱口先生の「「マージナル大学」の社会的意義」とピッタリ合うので、お蔵出しします。

ここ数回の研究会に参加して考えていることがある。それはおそらく関係者はみんな(たぶん、何十年も前から)感じていることだと思うが、大学を一枚岩に捉えてはいけないということである。その含意は二つある。一つは90年代のゆとり教育よりはるか前から学習時間が減って、全力で受験勉強をせず、適当な努力で適当な大学に入っているという学生がいるため、大学内で学生の能力の分散が激しくなっていることだ(天野先生の『試験と学歴』を参照)。偏差値50以下(というのが、どういう基準でいわれるかわからないが)の学校にもとても優秀な学生がおり、二極化している。もうひとつは、二極化のもう一つの極、すなわち出来ない学生である。そういう子たちの中には、単に相対的に計算能力が低いとか論理能力が低いとかいうレベルを超えて、学習障害をもっている者もいる。そういう子たちに居場所を提供しているという意味では、学校は既に教義の意味で福祉施設としての機能を果たしているのである。だが、残念ながら一時的なシェルター以上の役割はほとんど果たしていない(学位を与える場合も多いが、それ以上のことではない)。

たぶん、本音ではみんな分かっているだろう。だが、同時に多くの人はそれを認めたがらないだろう。まず、学校では自分の学校の質に関わるので、体面上認めがたい。第二に、親はしばしば自分の子どもの学習障害を認めたがらない。これは親本人も含めて社会的な偏見があるからである。結局、大学がそういう問題を認めて、それに対応する主体であろうとするならば、それはスティグマを引き受けることになる。その覚悟があるかどうか迫るなどというのは青臭い議論である。そういう制約条件を前提にして、その中で何をやるかである。刑務所、学校、工場、病院というのはよくセットで取り上げられるが、工場はともかく、刑務所や病院だけでなく、学校も実に福祉機能を担っているということになる。刑務所については浜井浩一先生の本に詳しい。病院についてはどの本がよいか分からないが、高齢者のたまり場としての病院はもう完全に福祉機能を果たしているといえるだろう。工場も昔は福祉機能を担っていたが(そして、それこそが私の博論のテーマの一つ!)、いまや完全にそれは機能しなくなっている。

と、ここまで書いてあったのですが、誤解のないように書いておきましょう。たぶん、今は昔ほど偏差値があんまり学力の能力分布の代理指標になってくれない。ノビシロはあるけど、そこそこしか勉強してこなかったという優秀な子たちはちゃんと方向付けされると「へぇ勉強ってこんなに面白いんだ」とそれなりに勉強します。ついでに上の学校みたいにプライドが高くないから、鼻もちならないなんてこともないですし、気持ちもいいです。そういう子たちが底辺の子たちと一緒にいるんですね。だからね、正確に表現すなら、中堅以下の、定員を集めるのに困っている大学は、マージナルな層を抱えていると見るべきではないでしょうか。そもそも、そんな数字を大学が出してくれるわけないですし、境界線上は判定が難しいですから、実証なんて望むべくもありませんよ。

そして、少なからぬ大学教員および職員は一生懸命、彼らを教えています。なんでこんなことまでと文句を言いながらもやっている方もいますし、黙々と取り組んでいる方もいます。口だけの方ももちろん・・・。

問題としては中学から高校へ先送りされたものが、終に大学までやってきたということでしょう。でも、ここにひょっとしたら、可能性があるかもしれません。高校までは基本的に先生が全部やるんです(最近はスクールカウンセラーとかもいますが)。それに比べると、大学は先生と職員が分業します。職員間も分業間の連携です。いろんな違った立場からいろんな人が見るというのはポテンシャルあると思うんです。それにそういう中で、本来は優秀な学生って本当に宝になるんじゃないかな。あ、もちろん、取引費用というか、管理費用発生しますから、人間関係が殺伐としてたりとかだと学生もろとも沈没しますけどね。ブラック大学ブラック学部。

これ、底辺大学の問題だと思っている人がいるかもしれませんね。でも、東大だって1割以下かもしれないけど、メンタル面に問題、抱えている人いるわけですよ。あの安田講堂に相談所が入っていて、そこはそれなりに忙しいんです。そういう意味じゃ、程度の問題で上位校だって同じ問題を抱えているでしょう。ただ、そういう問題意識から取り上げられて、対策を打つという風になっていないだけで。でも、やっぱり1割から2割を超えるとなると、取り組まなきゃならないことも変わってきますよ、きっと。だから、底辺高校問題とはちょっと位相が違うと思います。私はよく分からないけど、高校の場合、学区制とか絡んでるわけでしょ。大学はそんなもんないもの。にもかかわらず、自生的にそうなったというところが面白いといえば面白い。
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