夏に大原の研究会で杉田さんをお呼びしようと思って、改めて、本を読みなおしているところであります。杉田菜穂さんは玉井金五先生のお弟子さんで、歴史的に社会政策の問い直しをしているところです。私の見るところ、野口さんと杉田さんのお二人の仕事が新しい社会政策像を構築していく重要な作業だと思っています。

しかし、この最初の本が出たとき、私はあんまり杉田さんの研究を重視していなかった。それは方法があんまり構築されていなかった、というより、出来の悪い武川理論(社会学的社会政策と経済学的社会政策)に人の好い玉井さんが乗っちゃって、さらに素直な杉田さんがそれに依拠したということです。私、何回か前の学会報告のときに玉井先生と杉田さんが報告したときに、社会学的社会政策と経済学的社会政策という区別がいかに意味のないものかということをお話ししました。労使関係中心の労働政策が経済学的社会政策であるなどと聞いて、納得する経済学者は一人もいないでしょう。だから、これは学会内政治の問題で、その意味ではそれなりの成功をおさめたと言えるでしょう。

この前の学会報告のときは、社会政策本質論争を議論されていたんですが、そもそもその意味は今でも私にはよく分かんない。そんなことよりも、杉田さんの議論で押せばよかったと今でも思ってます。彼女の問題提起は私なりにまとめてしまうと、女性政策と児童政策と優性政策があわさりあった家族政策をベースに人口政策という観点から社会政策を捉え直しましょう、ということです。革命的提言です。だから、その線で行けばいいと思うんだけど、なかなかそうならない。杉田さんの手法は基本的に中心人物を見定めて、それに即して本を読み解いて整理するというものです。まあ、学説史研究と言ってよいでしょう。

正直、これが出た当初、そこまですごい研究だとは思ってなかった。というよりは、愚かなことに理解できなかった。でも、この次に出る研究もあわせて考えると、大変な革命になるかもしれません。人口という視点はやはりすごい。そこに流れ込む学派を総合的に捉えて行ったこともすごい。私も講義では、労働力政策を説明するときには、厚労省というのは昔からひどくて、労働市場がひっ迫しているときは婦人よ、家庭へ還れと呼びかけ、労働力が足りなくなりそうだと思うと、参加!と号令をかけ始める、定見なんてない、ただ需要量と供給量だけ見てるんだという説明を必ずしますが、労働力政策は人口政策と一体なんですね。そう考えると、人口政策は労働政策と社会福祉政策をうまく繋ぐ架け橋になるかもしれない。これは私の見るところ、1930年代から1960年代まで重要です。学校政策も含めてね。

でも、現在、それがどれくらい意味があるのか。あるいは、それ以前はどうであったのか。そう考えてくると、ちょっと重点の置き方が変わってくるんじゃないかという気がします。どう違うのかはここでは書きませんが(そして、書かないと忘れる公算が大ですが)、いずれにせよ杉田さん研究はリファレンスフレームワークになることは間違いないですね。
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