杉田菜穂さんから新著をいただきました。ありがとうございます。

実は原稿の段階で読ませていただいていたのですが、もう二稿かなんかだったので、コメントもできずという状態でした。しかし、あらためて読み通してみると、また違った印象がありますね。今回の本で杉田さんは半歩上のレベルにあがったと私は見ています。もう半歩、抜け出せないのは、あまり彼女が方法的な問題に意識的でないというところです。その弱点が彼女の議論の弱さでもあり、なかなか理解しにくくなっている所以でもあります。しかし、現時点で日本の社会政策の歴史を描いた本としてナンバーワンであると断言しましょう。ただし、菅山さんやゴードン先生のときと違って、そう簡単にこの評価が同意を得られるとは思っていません。その理由は、あまりにもオリジナリティが高いので、多くの人、とくに社会政策まわりの人はきっと理解できないだろうなと思うからです。学派にも興亡があり、ゴードンさんも菅山さんもある意味、あがりのところにいる人です。でも、杉田さんは完全にフロントランナーです。

日本の社会政策といったときに、基本はローレンツ・シュタインから入るべきだと思うんです。シュタインの原著を読んだわけではないので、あまり偉そうなことは言えないのですが、シュタインには国家学がバックボーンにあって、その周囲に社会学(彼はその創始者の一人と言われる)、経済学、そして応用経済学がある。彼の定義によれば、社会政策は応用経済学の一領域です。社会政策論のときはあまり出てこないんですが、実は彼の根本には社会有機体説がある。そして、後藤新平なども共有していた。今回の本で杉田さんが人口政策論を入り口と出口において、優性学を媒介に、家政学、社会衛生学などに入って行ったのを読んで、いきなりその核心にアクセスしたなと驚きました。すごいことですよ。杉田さんの場合、方法論に弱いのはたしかに弱点なんだけど、個人的にはその空気を読まないで、どんどん自分の世界で核心に迫っちゃう感じが、いかにも杉田さんらしくて私は好きです。このまま走り抜けて欲しい。

今回の本は第1部がとにかく圧巻。第2部以降は前の本と同じく、おや?というところもあるけれども、ところどころ面白い材料も提供されています。大河内批判とか書いてますが、あんまりこだわりはないので、あっさり社会学的社会政策という枠組みも超えてっちゃいましたね。社会政策関係の学者が読むより、稲葉圭信さんとか、大谷栄一さんあたりが読んだら、生産的な面白い議論が出来そう。次に行きつく先はそこだと思います。
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