学会誌「社会政策」の最新号が送られて来たので、さらっと目を通す。私の独断と偏見で言うと、読むべき価値があるものは小林彰「「新しい公共」と社会福祉法人の役割」、田村豊「スウェーデン型組織の成り立ちと構造」、訓覇法子「職業教育改革にみる就労ラインの修正」、田中夏子「イタリアにおける「補完性原理」受容のプロセス」と各書評である。私にとっての次点は橋本理「日本における非営利組織論の諸相」で、こういう交通整理はあると便利だなという感じである。

小林論文は現実の複雑さをきちんと描いているので、それだけで読む価値がある。今回の号は全体的に中間団体の重要性には気付いているようだが、参考になるなと思えたのはこの小林論文だけである。

田村論文は自動車産業の労使関係・労務管理の文献としては必読である。ただ、個別論文として抜群の分析力を発揮しているものの、製造業が産業を代表しなくなった現代において、労使関係が社会政策においてどのような意義があるのか不明瞭であるという一点は、他の多くの労使関係研究と同じでいつも通り留保しておきたい。

訓覇論文はまだ、一回では咀嚼しきれていないが、学校教育・職業訓練・専門職教育などの領域に関心がある人は必読である。スウェーデンの事例だが、この問題を考えるのに非常に示唆を与えると思う。これはそのうち、時間があったら、丁寧に読み返したい。この論文を素材に読書会をやってもいいくらいである。

田中論文は分かりやすいが、学術的深みがどれくらいあるのかと問われると、一瞬、答えに窮する。イタリアの事例は単純に知らなかったので面白かったというだけかもしれない。紙幅の都合で簡単に書いてあるので、もう少し詳しい話を読みたいという気もする。

「社会政策」は専門ジャーナルというよりは、インターディシプリナーな学会の特徴として、他領域の人の研究を知るための雑誌という性格を持っているようである。そう考えれば、なぜわざわざ教科書にでも書いてあるような内容を書き連ねているのかが分かる。他領域の教科書を読む労を省いてくれているのだろう。逆に言うと、専門ジャーナルのような敷居の高さはないので、誰でも読むことが出来る。首藤若菜「男性稼ぎ主モデルと女性労働」などは常識的で何の面白さもないが、学部の講義の材料に使うのには助かる素材だと思う。
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