2013年11月25日 (月)
さっきまで、大槌町の大ヶ口集会所で開かれていたNHKの収録に参加していました。POSSEの渡辺君が話をするというので、どんなもんだろうと聞きに行ったのです。出てきた論点はそれほど真新しいこともなかったですが、いろいろと聞いて、頭の中の整理にはなりました。
岩手沿岸部、とりわけ大槌を中心に考えるなら、一番の問題点はコミュニティが分断されてしまったことなんですね。働かない人のなかに働く気持ちにならない人もいるという意見が強くあって、その背後にあるのは不安感だということが語られていました。いろいろと話が行き交ったのですが、私が聞いている限り、つづまるところ、震災前には強力なコミュニティがあって、みんなそこに強く結びついていた。それがなくなったことが、そういうものがあまりない地域で暮らしている私のような者から見ると、想像できないほどの不安感を呼び起こしているんだろうなということを感じました。
じつはこれに対する対策はほとんどとられていません。研究者の中には、それが必要であるということに気が付いていた人はそれなりにいましたが、衆寡敵せず、ほとんどそれを知ることは出来ません。政策面で見ても、この問題を克服するような施策が打たれているかと言えば、必ずしも打たれていないのが現状です。
具体的に行政のセクションで言えば、生活は福祉の問題であり、雇用は商工労政の問題です。また、生活に関わる育児が重要であるという観点からみると、教育もまた関連します。これは中央官庁の系統からいえば、厚労省、経産省、文科省がそれぞれ関係します(保育は厚労省ですが)。役場の中でもこうしたセクションの連携はとれていません。とれていませんというか、とらなければならない、という事態は震災を機に進展したのです。たとえば、福祉セクションは震災後、ボランティアの対応に追われ(それはそれで重要な局面もありましたが)、通常の福祉行政が出来ない状態でした。従来の福祉施設も震災のダメージを受けており、たとえば、就労の面で仕事がなくなるなどの状況に直面しており、従来の領域の福祉行政でさえも仕事は増えているのです。これに付け加えるのは無理です。
現場レベルではこうしたことが無理であるのみならず、中央の方もほとんど事態を理解できておりません。今なお、2000年代に問題になった非正規問題に縛られる形で、正社員化こそが至上命題のごとく考えられているのです。さらに、ミスリーディングなのは、有効求人倍率ばかりに捉えられているわけです。これは専門的に言えば、潜在失業を考えていない。日本の有効求人倍率はハローワークに行って求職活動した人のみ求職者にカウントされます。大槌から釜石小佐野にあるハローワークまで車がなければ、片道500円以上、往復で1000円かかります。求人情報はたとえばマストやローソン、役場でも配られています。ということは、実際にハローワークまで出向いて、求職活動をするのはまさに応募するときなのです。ということは、求人倍率は多めにカウントされていろと考えて当然でしょう。
コミュニティの崩壊は不安感を引き起こしているだけではありません。昔ながらの「子どもは宝」という文化が残っている沿岸部では、当世流に言えば、社会的子育てが実現できていた側面があります。ところが、これが出来なくなってしまった。そうなると、女の人たちは育児、介護等で時間が割かれ、ますます仕事に行くのが困難になってしまった。さらに、仮設住宅で職場と家が遠くなってしまった。バスで送迎があったとしても、時間的にかりに片道15分だったとしても往復で30分かかります。主婦にとって30分は結構、大きい。これに拘束時間が長ければ、ほぼ立ち行かなくなります。また、通勤手段を自分で持たないということは、かりに子どもが熱を出して迎えに行かなければならなくなったとき、職場で帰ることが許されても、実際には迎えに行けないわけです。もちろん、人手不足の会社がこれをフォローするのは無理でしょう。
渡辺君がブラック企業というより、震災以降の雇用条件が悪くなっているということで呼ばれましたが、被災地全体で荒んで暴力的になっているのはじつは職場だけでなく、家庭でもそうであり、DVの問題も増えています。仙台のブラック企業の話は都会の話なので、今野君が言うようにこれに対抗できるのは組合ですが、組合が問題に気付くのにも遅いので、これを少しずつ啓蒙して行くという段取りで間違いありません。すぐには解決できませんが、POSSEに引き続き頑張ってもらうしかない。それ以外の話は大槌、釜石でもありますが、解決は難しい。少なくとも今の私の立場では解決策は容易に提示できる状態ではありません。というのも、一般論を述べても仕方ないからです。
よく被災地の心のケアといいますが、心のケアはじつは大して役に立たない。はっきり言って焼け石に水です。もちろん、対処療法としてはやった方がマシですが、これだけ大量に出現し始めているということは、地域の社会問題なのであって、それを解決しないことには解決できないのです。あとは、支援者と被災者あるいは後背地の方も含めて消耗戦です。
この他に住む場所の問題、復興計画の遅れなど、様々な複合的な要因があるのは言うまでもありません。こらはいずれも今のとても厳しい状況です。でも、すべては正確な状況把握から始まるほかないのです。とりあえず、メモ代わりに、公にしていいことだけ、書いておきます。
岩手沿岸部、とりわけ大槌を中心に考えるなら、一番の問題点はコミュニティが分断されてしまったことなんですね。働かない人のなかに働く気持ちにならない人もいるという意見が強くあって、その背後にあるのは不安感だということが語られていました。いろいろと話が行き交ったのですが、私が聞いている限り、つづまるところ、震災前には強力なコミュニティがあって、みんなそこに強く結びついていた。それがなくなったことが、そういうものがあまりない地域で暮らしている私のような者から見ると、想像できないほどの不安感を呼び起こしているんだろうなということを感じました。
じつはこれに対する対策はほとんどとられていません。研究者の中には、それが必要であるということに気が付いていた人はそれなりにいましたが、衆寡敵せず、ほとんどそれを知ることは出来ません。政策面で見ても、この問題を克服するような施策が打たれているかと言えば、必ずしも打たれていないのが現状です。
具体的に行政のセクションで言えば、生活は福祉の問題であり、雇用は商工労政の問題です。また、生活に関わる育児が重要であるという観点からみると、教育もまた関連します。これは中央官庁の系統からいえば、厚労省、経産省、文科省がそれぞれ関係します(保育は厚労省ですが)。役場の中でもこうしたセクションの連携はとれていません。とれていませんというか、とらなければならない、という事態は震災を機に進展したのです。たとえば、福祉セクションは震災後、ボランティアの対応に追われ(それはそれで重要な局面もありましたが)、通常の福祉行政が出来ない状態でした。従来の福祉施設も震災のダメージを受けており、たとえば、就労の面で仕事がなくなるなどの状況に直面しており、従来の領域の福祉行政でさえも仕事は増えているのです。これに付け加えるのは無理です。
現場レベルではこうしたことが無理であるのみならず、中央の方もほとんど事態を理解できておりません。今なお、2000年代に問題になった非正規問題に縛られる形で、正社員化こそが至上命題のごとく考えられているのです。さらに、ミスリーディングなのは、有効求人倍率ばかりに捉えられているわけです。これは専門的に言えば、潜在失業を考えていない。日本の有効求人倍率はハローワークに行って求職活動した人のみ求職者にカウントされます。大槌から釜石小佐野にあるハローワークまで車がなければ、片道500円以上、往復で1000円かかります。求人情報はたとえばマストやローソン、役場でも配られています。ということは、実際にハローワークまで出向いて、求職活動をするのはまさに応募するときなのです。ということは、求人倍率は多めにカウントされていろと考えて当然でしょう。
コミュニティの崩壊は不安感を引き起こしているだけではありません。昔ながらの「子どもは宝」という文化が残っている沿岸部では、当世流に言えば、社会的子育てが実現できていた側面があります。ところが、これが出来なくなってしまった。そうなると、女の人たちは育児、介護等で時間が割かれ、ますます仕事に行くのが困難になってしまった。さらに、仮設住宅で職場と家が遠くなってしまった。バスで送迎があったとしても、時間的にかりに片道15分だったとしても往復で30分かかります。主婦にとって30分は結構、大きい。これに拘束時間が長ければ、ほぼ立ち行かなくなります。また、通勤手段を自分で持たないということは、かりに子どもが熱を出して迎えに行かなければならなくなったとき、職場で帰ることが許されても、実際には迎えに行けないわけです。もちろん、人手不足の会社がこれをフォローするのは無理でしょう。
渡辺君がブラック企業というより、震災以降の雇用条件が悪くなっているということで呼ばれましたが、被災地全体で荒んで暴力的になっているのはじつは職場だけでなく、家庭でもそうであり、DVの問題も増えています。仙台のブラック企業の話は都会の話なので、今野君が言うようにこれに対抗できるのは組合ですが、組合が問題に気付くのにも遅いので、これを少しずつ啓蒙して行くという段取りで間違いありません。すぐには解決できませんが、POSSEに引き続き頑張ってもらうしかない。それ以外の話は大槌、釜石でもありますが、解決は難しい。少なくとも今の私の立場では解決策は容易に提示できる状態ではありません。というのも、一般論を述べても仕方ないからです。
よく被災地の心のケアといいますが、心のケアはじつは大して役に立たない。はっきり言って焼け石に水です。もちろん、対処療法としてはやった方がマシですが、これだけ大量に出現し始めているということは、地域の社会問題なのであって、それを解決しないことには解決できないのです。あとは、支援者と被災者あるいは後背地の方も含めて消耗戦です。
この他に住む場所の問題、復興計画の遅れなど、様々な複合的な要因があるのは言うまでもありません。こらはいずれも今のとても厳しい状況です。でも、すべては正確な状況把握から始まるほかないのです。とりあえず、メモ代わりに、公にしていいことだけ、書いておきます。
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