第5弾は、ちょっと異質ですね。たぶん、自分で考えたいことがあって、それを深めるきっかけに使ってくれたのでしょう。そういう読み方ももちろん、大歓迎です。

・女性の社会進出において、現代では様々な取り組みがなされているが、課題は多々ある。どのような対策をとればよいのか。

女性の社会進出とは具体的に何を指すのか、ということから考えないとダメですね。ただ、就労という意味では昔から女性も働いていたし、ボランティアという意味ではむしろ男性の方が遅れてるし、どこに焦点を置くかじゃないでしょうか。まあ、政策的には優秀な専業主婦を労働市場に引っ張り出したいということでしょうけれども、それを誘導する必要があるかどうかは議論のあるところだと思います。ただ、一生懸命働いて稼ぐ方が損をする今の税制は変えた方がいいと思います。

・高齢化している現代で、今後どのような雇用形態を形成していけばよいか。

ワーク・ライフ・バランスに対応できるように、正社員を多様化せざるを得ないでしょう。これは佐藤博樹先生たちがおっしゃる通りです。今後は会社の中でも中核的な管理者層のなかに、親の介護等のために仕事量をコントロールしなければならない人が出て来ます。そうなったときに、彼らが辞めるのを止めないか、あるいはフルでは働いてもらえなくても、働ける働き方を用意するか、どちらかしかありません。会社にとっては後者の方が得ですから、そうなっていくだろうと思います。

・報酬に結びつかない労働にはどのように対策していかなければならないか。

これは家事労働のことを言っているのか、サービス残業の話をしているのかで全然、答えが違ってくると思います。サービス残業は残業代の取り立てをしっかりする(昨今の傾向とまったく逆ですが)、労働時間規制を徹底させてそもそも残業を減らすという二つの方向でしょうか。もう一つは賃金債券の時効を10年くらいに延長するとよいのではないでしょうか。過渡期には賃金支払いで潰れる会社も出るでしょうね。それも移行期には仕方のないことです。家事労働は家庭のなかのことですから、それぞれのお宅で解決すればいいことじゃないでしょうか、というのが私の意見です。

ボランティアについては考えた方がよいと思いますが、今のところ、どうすべきだという解決方法はありません。ボランティアをやる人は、自分の人生が充実していて、その満ち足りた分を社会に還元したいと考える人と、自分の人生が何か足りないと感じていて、その不足を他者に分けてほしいと考える人がいます。後者の場合、自分でそういう状況にあることを認識できていない、あるいは認識するのが怖くて無意識に理解するのを避けている人も少なくありません。そういう人は合理的な話をするのは困難です。そして、そういう足りない人を利用する悪い人もいます。

解決すべきかどうかで言えば、解決すべきですが、解決できるかどうかで問うと、困難な問題です。自分に出来ないなと判断したら、ちゃんと距離を取りましょう。中途半端な覚悟で飛び込むと、自分も周りも傷つくので、あまりよいことはありません。ここまで言われて、なお飛び込みたい方は止めません。

・なぜ国家資格があるのに、低賃金の職種があるのか。

これは難しい問題ですね。一般的にサービス職というのは、ものづくりに比べて、目に見える形ではないので、どうしても評価が低くなりがちなんですよ。それは国家資格があっても変わらないですね。専門職の問題を考えるときに、労働組合でなければ、業界団体が業界全体の労働条件を上げるという方向が想定されますが、強力なそういう団体もないんでしょうね。また、専門職には自分の仕事が不十分かどうかという基準を自分のなかにもっていて、その基準に満たない、あるいはその基準を満たすことが出来ない環境(たとえば十分な訓練を受けられない)ことに不満を持っても、賃上げに関心が薄い人たちがいるということもあります。あとは先ほども書きましたが、単純に収益システムが確立しておらず、払いたいけど、払えないという状況もあります。それから、ケア労働のように人に奉仕するようなタイプの仕事ですと、人に奉仕するという行為自体が尊いので、金銭を語ることを卑しむ傾向がありますね。

・また、そのような職種を減らすにはどうしたらよいのか。

業界裁定でちゃんとした基準を作ること、さらに、それを社会のなかで認知してもらうことでしょうか。後者はたとえば、保育や介護などの福祉領域であれば、国家からの補助を受けるということも一つでしょう。あとは業界を超えて、他の相場と比較することですね。いずれにせよ、業界団体か、労働組合か、組織をきちんと作ることが大前提です。

・賃金格差の格差を減らすためにはどうしたらよいのか。

格差というのは絶対的に悪いものではありません。社会構造上、差異がある程度、生まれるのも仕方がないことです。ただ、その格差に、正当性があるものなのかどうか、ということは絶えず問い続けなければならない問題です。一にも二にも労働組合が頑張らないとダメですね。労働運動と社会運動がよい意味で連携して行くと、社会全体を良くして行くことが可能になるでしょう。

一番、大事なことは覚悟を決めることです。それがなければ誰も説得できませんし、こういう理想に現実がなっていないのは誰かが悪いせいだという糾弾かこういう理想になったらいいなというお花畑の議論になってしまいます。そういうのは人生の無駄なので避けましょう。なお、お花畑の議論をする人というのは、NPOの関係者や大学の先生も結構います。それから実務家でも自分の専門以外についてはそういうことを言い出す人がいます。こういう人たちは既に長い時間をそういうことに掛けて来た人たちであり、今からその価値観を修正させることはかなり困難ですし、そんなことをする必要もありません。そういう偽物に騙されないようにしましょう。

大学の先生であれば、みんなすごいかと言えば、そんなことはなく、この本に関して言えば、私が見たり、聞いた限りでも、何人かの大学の先生よりも関口ゼミの何人かの方がよほどよく読めていると思いますよ。


日本の賃金を歴史から考える日本の賃金を歴史から考える
(2013/11/01)
金子良事

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