研究会で小路さんの『技手の時代』を読むことになって読み返しているんですが、やっぱりいろいろ面白いことが書いてありますね。それを小出しに紹介して行きたいと思うのですが、その一つに第7章で議論された二つの職分論というのがあります。

この二つの職分論はざっくり言うと、現場ワーカーのプロモーション・ルートをどのように考えるか、ということです。ギルド社会主義的職分論というのは、技術者と職工を別系統にして、しかし、職工は職工内のプロモーション・ルートを作って、技術者が上、職工が下という意識を排除すべきだというものです。これに対して儒教的職分論というのは、労資協調さえも労資が別々のものであるという前提があるのでダメであり、両者を一体のものとして捉えるべきだという考え方ですね。当然、昇進は職工から技術者まで開放されます(少なくとも理念的には)。小路さんは安岡正篤の影響も指摘していて、実際に検討しているのは神野信一の著作です。この神野の系譜は、言うまでもなく戦時期の産業報国会につながっていきます。

ここまで書いてくると、前者がジョブ型(私だったらトレード型と呼びますが)、後者がメンバーシップ型と呼びたいところでしょう。ただ、ことはそう単純でもありません。現在の日本企業の中では後者を前者にシフトしようという動きがあると思いますが、それはメンバーシップ型からジョブ型へというよりは、単線型から複線型への移行です。分かりやすく言ってしまえば、管理職に乗るルートと、それ以外のルートを切り分けるということです。人事としてはこれを作りたい。テクニカルな問題は管理職に乗らないルートの処遇をどこまで上げるのかということにつきます。

時代は変わってるなと思うのは、同様の問題は既に1980年代前半に認識されていて、成長が鈍化して行く中で、管理職のポストが足りなくなるなかでどう対応するかという形で現れ、そのときの答えが専門職制度だったわけですが、そのときと今では管理職に対する世間の価値観が変わっているからです。管理職時代の条件が悪くなったこともありますが、昔ほど世間の目が厳しくなくなったということもあるかもしれません。自分たちは自分たちというような。それにワーク・ライフ・バランスが整ってくると、会社としては昔のワーク一辺倒の人は減って困るというのもよく聞きますし。

そういう意味ではメンバーシップ型のなかの組織編制の中でも、二つはずっと出てくる問題なんです。まあ、今の状況だと別コースにして、人気がない方の条件をあげつつ、バランスを取るしか解決策はないと思いますし、その具体的な解は会社ごとに違いますよね。



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