『アステイオン』2016年84号をサントリー文化財団からいただきました。ご無沙汰してしてしまっているのに、長く気にかけてくださり、ありがとうございます。

今回の特集は『帝国の崩壊と呪縛』ということで、国家論や国民国家ということに関心のある私としてはとても興味深い内容です。去年、佐藤成基さんの『国家の社会学』の書評を書きましたが、『アステイオン』は歴史ももちろん視野に入れているものの、現在の国際問題のホットトピックを扱うので、勉強になりました。ただ、今後の目玉は30年記念の特別企画でしょう。山﨑正和・苅部直対談に始まり、何人かで分担して書いているアステイオンの歴史はなかなか興味深いです。亡くなられた初代編集長の粕谷一希さん、よい意味でも旧世代の感じの方で、日本の古い教養人の雰囲気を持っていたし、そして、そういう文化をまた創りたかったんだろうなと思います。そういう意味では、晩年、河合栄治郎の本も出されています。そういう思想的な背景なんかを改めて思い出しました。

当時と違って、代々木系は弱くなったと思います。というか、それはかつての代々木系の出版社の出版物を見ても、もう昔のように代々木系とだけでは理解しきれない、多様な本を出さざるを得なくなっている。それを資本主義的な市場原理で説明するのか、より組織内在的な社会主義(を目指す)組織の世代間継承の問題と見るのか、どちらも可能でしょう。逆に言えば、こういう証言を読まないと、よく分かんなくなりますよね。そして、そういう状況は、「帝国の崩壊と呪縛」のうちの、冷戦体制の崩壊とももちろん重なっているんでしょう。

ただ、そうした中で、私が個人的にもっとも、ああそうか、と感心したのは宮武美知子「沖縄の護国神社」ですね。素人の我々からすると、現在の国家神道の問題は、すぐに靖国神社の問題と誤解しがちですが、慰霊ということでは、靖国神社以上に全国津々浦々にある護国神社もあるんですよね(もちろん、それ以外にも地域によって、その地域の神社やお寺に慰霊塔が建てられていることも珍しくありませんし、それだけが独立して建てられていることもあります)。簡単に言えば、時間の経過とともに世代交代が起こり、護国神社は地域化をしているという話で、最後には靖国もここ最近では国家護持ではなく、慰霊に専念する方向に変わっている(先代からの方針)とのこと。今の宮司が徳川康久氏というのも初めて知りました(無知ですみません)。徳川家って実は結構、近代日本でも重要な役割を果たしてますよね。島薗先生の国家神道論もいいけれども、そういうもので勉強している人にはぜひ、こういうのも手を取って欲しいです。それこそ『国家の社会学』とあわせて読書会でもやりたいと思いました。
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