2016年05月31日 (火)
著者の西川さんから『マネジメントに活かす歩合給制の実務』をいただきました。ありがとうございます。
戦時期に家族賃金という形で、固定月給制の導入のブームが作ろうとされたときに、実務家、三機工業の大矢三郎という人が『請取賃金制度』ダイヤモンド社という本を書いて、旧来の請負給だってやり方次第ではいいんだという主張をされたことがあります。大矢は、それこそ上野陽一なんかの日本能率協会系のコンサルタントとも近く、当時の最先端の賃金の議論をよく周知されていました。その当時は今と違ってビジネス書という範疇はないので、大矢賃金論は実務と学術書の中間のような本に仕上がっていました。西川本を読みながら、大矢賃金論を思い出していました。
この本はかなりよいです。人事関係者、労働組合関係者は必携ですね。ポイントは二つ。一つは何よりも実務的な面で分かりやすく論点が提示されています。組合関係者もこれを読んで歩合給への対抗を考える必要があります。加えて、請負や歩合の問題を考える上で示唆深い本であることがあげられるでしょう。
私の本も大分利用していただきました。ありがとうございます。『日本の賃金を歴史から考える』の一つのテーマは、労働を雇用労働からだけ考えるのではなく、請負との対比から考えていくというものがありましたので、まさに私の問題意識を実務的に発展させていただいたと思っています。あの本を書いて、それぞれの現場の問題意識からのコメントをいくつも頂戴して、それだけでもかなり嬉しかったのですが、まさか実務本でまでこのように取り上げていただけるとは思っていませんでした。あの本は具体的な事実もそれなりには書いてありますが、基本は理論的な本です。たぶん、そういう思考方法はアカデミックな研究者の方が慣れていますが、逆に、実務的な詳細はやはり現場の人にはかないません。ですから、こういう形で、お互いの問題意識を深め合うというのは、すごく理想的だなと感じ入りました。
この本を読んでいると、それこそ実務的なかゆいところに手が届く内容になっているのではないかと思います(ただ、私にはその判定能力はないので、あくまで思います、としておきます)。判例も、それほど複雑ではなく、論点にあわせて適切に切り出していると思います。さらっと書きましたが、これは意外と難しい作業で、法律文書に慣れていて、なおかつ実務で人に話すことに慣れていなければ出来ないでしょう。原理的な部分と実務的な部分が併存しているのはいいですね。
私がお勧めしたいのは、歩合給を導入しようという企業や組合の関係者だけではなく、それに反対する立場の方にこそです。じつは私自身も西川さんの言う方向には必ずしも賛成していないのです。ただ、だからこそ、反対の考え方を学ぶ上でも、ぜひ読んで欲しいと思います。
私が問題提起しておきたいのは、能力育成の問題がほとんど触れられていないということで、それと関連する論点ですが、長期的な視点が入ってこないことです。もちろん、大きい流れとして、タイム・スパンが短くなっているというのはその通りですが、人材育成では長期的な視点を入れないわけにはいきません。細かい仕事内容は変動する場合もあるので、変化することもありますが、大まかな人材育成方針は必要です。
歩合というのは、仕事を適切に切り出せる、ということが前提になります。次は、その切り出した仕事間の関係をどう理解するのかということが問題になります。よく言われるように、簡単な仕事を外注すると、若い人を育成するために最初にやらせる仕事がなくなってしまう、というようなことが起こります。ですから、部分最適と全体最適(長期も含めて)のバランスを常に考える必要があります。しかも、この場合の全体最適の方は、正確に測れるようなものではないので、おおよそこの領域は考えておかなきゃならんなというところを押さえた上で、あとは勘でやるしかありません。
ここと関係するのは、西川さんはおそらく、研究に対して敬意を払って勉強なさっているので、衛生分野にもそういう形で接されていると思うのですが、そこの議論の基本は、現在の点の関係なので、長期になると変わってくると思うのです。とくに、気持ちの部分は、アカデミックに切り出すよりも、経験則で語った方が伝わる部分もあるので、もうちょっと大胆にご自分の経験を語られてもよかったのではないかと感じました。
人事関係、組合関係のみなさん、ぜひ一冊、おいておきましょう。
戦時期に家族賃金という形で、固定月給制の導入のブームが作ろうとされたときに、実務家、三機工業の大矢三郎という人が『請取賃金制度』ダイヤモンド社という本を書いて、旧来の請負給だってやり方次第ではいいんだという主張をされたことがあります。大矢は、それこそ上野陽一なんかの日本能率協会系のコンサルタントとも近く、当時の最先端の賃金の議論をよく周知されていました。その当時は今と違ってビジネス書という範疇はないので、大矢賃金論は実務と学術書の中間のような本に仕上がっていました。西川本を読みながら、大矢賃金論を思い出していました。
この本はかなりよいです。人事関係者、労働組合関係者は必携ですね。ポイントは二つ。一つは何よりも実務的な面で分かりやすく論点が提示されています。組合関係者もこれを読んで歩合給への対抗を考える必要があります。加えて、請負や歩合の問題を考える上で示唆深い本であることがあげられるでしょう。
私の本も大分利用していただきました。ありがとうございます。『日本の賃金を歴史から考える』の一つのテーマは、労働を雇用労働からだけ考えるのではなく、請負との対比から考えていくというものがありましたので、まさに私の問題意識を実務的に発展させていただいたと思っています。あの本を書いて、それぞれの現場の問題意識からのコメントをいくつも頂戴して、それだけでもかなり嬉しかったのですが、まさか実務本でまでこのように取り上げていただけるとは思っていませんでした。あの本は具体的な事実もそれなりには書いてありますが、基本は理論的な本です。たぶん、そういう思考方法はアカデミックな研究者の方が慣れていますが、逆に、実務的な詳細はやはり現場の人にはかないません。ですから、こういう形で、お互いの問題意識を深め合うというのは、すごく理想的だなと感じ入りました。
この本を読んでいると、それこそ実務的なかゆいところに手が届く内容になっているのではないかと思います(ただ、私にはその判定能力はないので、あくまで思います、としておきます)。判例も、それほど複雑ではなく、論点にあわせて適切に切り出していると思います。さらっと書きましたが、これは意外と難しい作業で、法律文書に慣れていて、なおかつ実務で人に話すことに慣れていなければ出来ないでしょう。原理的な部分と実務的な部分が併存しているのはいいですね。
私がお勧めしたいのは、歩合給を導入しようという企業や組合の関係者だけではなく、それに反対する立場の方にこそです。じつは私自身も西川さんの言う方向には必ずしも賛成していないのです。ただ、だからこそ、反対の考え方を学ぶ上でも、ぜひ読んで欲しいと思います。
私が問題提起しておきたいのは、能力育成の問題がほとんど触れられていないということで、それと関連する論点ですが、長期的な視点が入ってこないことです。もちろん、大きい流れとして、タイム・スパンが短くなっているというのはその通りですが、人材育成では長期的な視点を入れないわけにはいきません。細かい仕事内容は変動する場合もあるので、変化することもありますが、大まかな人材育成方針は必要です。
歩合というのは、仕事を適切に切り出せる、ということが前提になります。次は、その切り出した仕事間の関係をどう理解するのかということが問題になります。よく言われるように、簡単な仕事を外注すると、若い人を育成するために最初にやらせる仕事がなくなってしまう、というようなことが起こります。ですから、部分最適と全体最適(長期も含めて)のバランスを常に考える必要があります。しかも、この場合の全体最適の方は、正確に測れるようなものではないので、おおよそこの領域は考えておかなきゃならんなというところを押さえた上で、あとは勘でやるしかありません。
ここと関係するのは、西川さんはおそらく、研究に対して敬意を払って勉強なさっているので、衛生分野にもそういう形で接されていると思うのですが、そこの議論の基本は、現在の点の関係なので、長期になると変わってくると思うのです。とくに、気持ちの部分は、アカデミックに切り出すよりも、経験則で語った方が伝わる部分もあるので、もうちょっと大胆にご自分の経験を語られてもよかったのではないかと感じました。
人事関係、組合関係のみなさん、ぜひ一冊、おいておきましょう。
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日本法令より、「マネジメントに活かす歩合給制の実務」を出版しました。歩合給制の...
2016/06/04(Sat) 19:55:00 | 株式会社ビジネスリンク 併設 人とマネジメント研究所|東京都 愛知県|
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