企業史料アーキビストの松崎裕子さんからエリザベス・シェパード,ジェフリー・ヨー『レコード・マネジメント・ハンドブック』日外アソシエーツをいただきました。ありがとうございます。本と一緒に送り状をいただくことはよくありますが、お手紙を別にいただくのはまれです。几帳面に書かれた宛名を見ながら、いかにも松崎さんの丁寧なお人柄が感じられるなあと思いました。

松崎さんのお手紙には、ハンドブックなので全部を読み通さないと理解できないという性格ではないが、訳者序文から第1章までは本書のエッセンスが述べられた部分なので、一読をお勧めしますという趣旨のことが書いてありました。訳者序文にはこの14年も前に出版され、電子的な環境その他が変わったにもかかわらず、この本を翻訳する意義として、原則を共有することが出来るという考えが述べられていました。これは非常に重要なことと思います。

実はこの本が出版されるのは、Facebookを通じて知っていましたが、あんまり手に取るつもりはありませんでした。それは私自身が出来ることが限られていると思っていたというのが第一、現にできることは粛々とやるしかないし、理想的な方法を知っても現実との落差が悲しいだけだと思っていたからです。ただ、実際に手に取ってみて、その考えを改めました。

この本はアーカイブズ関係者以外にも非常に有益であることを強調しておきたいと思います。まず、狭い範囲で言えば、社会科学系の研究者は得るところが大きいと思います。つまり、自分が使うデータとはどういう性格を持っているのか、ということを外形的な部分からの分析が述べられているからです。だから、データセッション的な研究会に関心がある向きにはお勧めだと言えましょう。

そして、何よりこの本は記録管理、アーカイブズ(文書)管理の本です。何らかの記録を体系だって整理するということは、組織である以上、どこでも生じうる必要であり、ということは、組織にかかわる人であれば、この本は実務的に得るところがあります。特に、「第2章レコード・マネジメントのコンテクストを分析する」が重要です。なぜか、文書を整理するためには、その文書がなぜ作成されたのかを理解しないといけません。そうであれば、その文書を作る組織に注目せざるを得ないのです。ですから、第2章は事実上の組織論です。というわけで、経営学、それから、社会学の古いシステム分析なんかに興味がある人にもお勧めできます。

言ってみれば、記録管理は組織の情報処理(あるいは管理)で、まさに組織の命脈です。もちろん、これがあれば、それだけで戦略を立てられるというようなものではありませんが、逆に言えば、使いこなせれば、すごい武器になりうるということです。私としては、企業もそうですが、政党、組合には特にこの本を読んで、組織戦略を考えるきっかけにしてほしいと思います。もちろん、全部を丁寧に読む必要はなくて、さらっと読み流せばいいんですが、実務をやっている人は現場の勘があるでしょうから、それでも響くところは響くはずですし、それで十分です。ただ、そういう刺激を与える本だと思います。

というわけで、おそらくはそんなに売れないだろうと思いますが、広くこの本をお勧めしたいと思います。

最後に、ファイリングは専門職です!と言っておきましょう。

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