連合総研の「雇用・賃金の中長期的なあり方に関する調査研究報告書」が2ヶ月ほど前に発表されました。連合総研のホームページで全文、読むことが出来ます。私も「日本の賃金と歴史と展望に関する研究委員会」(座長:龍井葉二連合総研副所長)では深く関係したので、この報告書に少しコメントというか、補足したいと思います。

濱口先生がこの報告書についてエントリにされています。その勘所を「一人前労働者の賃金とは、単に生存が保障されるだけではなく、次世代の労働力の再生産を可能とするような生活を保障する賃金でなければならない」「このあるべき賃金を、一定の仕事スキルを持った一人前労働者に一律に保障するというところで、労働力の市場価格とは区別された一人前労働者の固有の賃金水準を設定するというイメージです」と要約されています。

前半部分の生活保障賃金の考え方が具体的に「親一人子一人」モデルが提示されました。この点が最終報告書と中間報告書では決定的に変わっています。これは明らかに藤原千沙さんの影響でしょう。ただ、ちょっとこの報告書だとこのモデルの意味が分かりにくくないかなと心配です。藤原さんの考え方については、同じく連合総研のDIOに掲載された「「多様な働き方」における生活賃金の課題」を読むとよく分かります。これもまた、濱口先生が勘所だけを紹介されているので、そちらを読んでもいいでしょう。コメント欄も早川さんと濱口先生のやりとりも重要です。そして、例によってまったく覚えていませんが、私も登場していますね。

わりと感情を刺激する議論でもあるので一つだけ補足。「親一人子一人モデル」というのは、藤原さんがシングルマザー世帯の研究をやってきたということの帰結でもあるのですが、ポイントは別に「二人親二人子世帯」モデルを否定しているわけではないんですね。単純に言えば、倍になるわけで、307万円の倍、614万円になるので、別に問題ないんですね。これは最低線を決めようということですから。だから、標準家族という考え方も、それはそれなりに問題があって、いろいろ言われるんですが、仮にそれを認めたとしても問題ないのです。標準家族の考え方の問題は家族計画の進展と結びついて理解する必要があるんですが、それはそのうちどこかで書くことにしましょう。

実はこのモデルは、長時間労働の相対化にも射程が及んでいるのです。つまり、シングルペアレントの世帯では、保育所や周囲の人の助けを借りたり、子どもの手伝いがあるにしても、基本的にはケアを一人でやらなければならないわけです。ということは、経済学の世界では、労働時間と余暇時間という分け方があるわけですが、この余暇時間もさらに、生活必要時間と余暇時間に分けるということが出来ると思います。この考え方は、今のインターバルの議論をさらに一歩、進めたものです。ワーク・ライフ・バランスということを考えるのであれば、実はこれはシングルペアレント世帯だけでなく、すべての世帯に関係する問題なのです。

後半部分、濱口先生が批判されているのは、一人前の仕事を全員に等しく与えるのは困難ではないか、ということです。ここはたしかに、具体的な仕事があげられていないので分かりませんが、具体的に確定するためには職務分析をしなければなりません。なお、ここでの職務分析は、仕事をよく知るベテランに話を聞くということです。この点は企業ごと、あるいは職種ごとに、産業ごとに定めていかなければなりません。これについては、実は既に実験的に試みたものが報告書になったと聞いているんですが、私はもらってないので、その後、どうなったか分かりません。
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