昨日まで資料集めに奔走していたので、更新できませんでした。続きを書きます。

所属型という理解がある程度の正しさを持っているというのは、賃金という観点から見ると、いわゆる属人給の考え方に親和的であるという点からいっている。属人給をどう考えるかというと、基本的には職務ではなく、人に対して支払う賃金ということになるだろう。

人に対して支払うことを少し遡ってみてみれば、被用者という立場に対して支払うというものである。これは別に法人との雇用関係である必要性はまったくない。別に、個人商店の店主と雇用関係を結んでも話は同じである。それどころか、元来、年功賃金論のようなものは、戦時期には中小企業を含めたどの産業でも広く見られる慣行として話題になった。いわく、高齢者の生活保証をある程度、考慮するという慣行である。これが年功賃金=生活給の発想の根底にある。

何れにせよ、人に対して賃金を支払うというのは、別に大企業においてのみ見られるわけではないのである。それはあえて刺激的な言葉でいえば、身分に対して支払われるのである。基本的には、被用者と雇用者という身分関係に対してである。この考え方は実は、西洋にも存在するのであって、日本だけの特殊事情ではない。

私が博論の中でも論じたことだが、基本的に雇用関係は一対一の関係なのである。しかし、雇用関係の内容は決して当事者同士の間だけで決められるわけではない。これが契約説ではなく、関係説の立場の肝である(関係説の立場については以前書いたここを参照。ただし、関係説と契約説を対比して書いてないので分かりにくいかもしれない)。

他方、今までの日本的経営をはじめとする雇用慣行論は、特に1960年代以降では、ほぼ社会関係から大企業のなかでの処遇を扱うようになっていった。この現象を実証研究の実証水準の高まりから理解してもよいし、小池先生のように段階論的に考えてもよい。要するに、いわゆる旧来の制度学派の人たちは、誰一人、個人間の契約だけで雇用関係の内実が決まるとは考えてこなかったのである。ただ、その分、集団内での個人の関係が見えにくくなったこともたしかだ。

身分制度は企業内にも現存している。ただし、二つのフェーズをわけて考えた方が良い。まず、濱口さんが考えているような、メンバーシップ、すなわち正社員という身分、などの区分け。これは昔から職工・臨時職員・職員・臨時工などという形で存在した。ここまでで理解を止めるならば、メンバーシップ型や所属型というのも間違っていないわけだ。でも、この身分と賃金は直接には結びつくとは限らない。賃金を見るにはもっと微細に制度を観察しなくてはならない。そこで、第二の身分制度が必要になる。すなわち、資格、あるいは軍隊風に言えば階級である。ちなみに、階級とか身分という言葉を使っただけで拒否反応を起こすような人には私の文章を理解してもらおうと思っていない。私は公の場で言葉狩りを行う一切の人々を学者として認めない。

賃金と資格の関係でまず思い浮かべるのは職能資格制度だと思うが、それを論じた途端、日本的な賃金だと早合点する人がいるから、あえてこれにそった説明はしない。何よりもまず、理解しなくてはならない最大のポイントは、仕事の分布である職制と人間の序列関係である資格は異なる二つの系統である、ということだ。ここで仕事の分布と書いて、わざと序列という言葉を使わなかったのは、組織の中の仕事が一つの系列に収斂しえない、という当たり前のことを表現したに過ぎない。仕事の序列以外で構成員を比較する基準が必要になる。それが資格なのだ。もちろん、職制と資格を連動することはよく見られる。たとえば、旧軍の師団長は中将(戦時には少将もいるが)とか、昔の日本鉄道(今のJR東日本に近い)だったら駅長助役は書記補、駅長に昇進する場合は書記、などである。要するに、職制で上のポジションに行くために、資格の昇進が連動している。職能資格制度はこの職制と資格を連動させる一つの仕組みにすぎないのである。

企業内での身分制度は、企業が多数を雇用していることを前提に成立している。仕事の分布であれ、人間の序列であれ、一人だけだったら成立しないからだ。多分、小池先生が段階論(理念型)で書かれているように、大企業が重要、という点を強調すれば、メンバーシップ型という理解もある意味では正しい。しかし、それを外国=職務型と対比して書くのはいかがなものか、と思う。

ちなみに、外国=職務型契約という理解については、プラクティカルに以下の点を確認すればよい。内部昇進をして仕事が変わるごとに雇用契約を更新するのか?

ついでに言うと、私の見るところ、日本と外国を対比させて、理念型で論じた最初の論者は和田豊治ではないかと思っているが、そのことは別の機会に改めて書くことにしよう。
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