渋谷さんの『女性活躍「不可能」社会ニッポン』、だいぶ、前にいただいていたのですが、一回紹介しようとしてエントリを書いていたところ、手違いで消えてしまったので、悪いなと思ってそのままにしていました。すみません。先日、ある機会でこの本の話が出て来たので、新たな気持ちで書いてみたいと思います。

この本は主婦パートの二つの労働運動の事例の詳細なルポルタージュです。名古屋銀行と有名な丸子警報器です。1章から3章は主婦パートにかかわるマクロ的な把握を行っていて、4章(名古屋銀行)と5章(丸子警報器)がそれぞれ詳しい事例になっています。マクロで押さえておかなければいけないのは、主婦パートの多くは生活が楽なわけではなく、満足度が高いというアンケート結果も、その聞き方は不十分なものであるという認識です。正直、ここら辺は玄人でなければ、その当否を検討することは難しいと思いますが、自分の身近なところで、どちらがリアルか、そういう感覚を大事に読んでいただきたいと思います。

労働の現場から労働問題を考える点では、この本の問題意識は東海林さんの『15歳からの労働組合入門』と共通していますね。普通は労働運動にかかわることが難しい主婦パートがどうして労働運動に携わるようになったのか、そしてどのように交渉していったのか、そういうリアルな経過が描かれています。正直、こういうノンフィクションは、要約すると魅力が半減するので、読んで面白さをぜひ体感してほしいです。

この本の中で面白いのは、参議院議員に立候補するところですね。私は労働組合の政治活動について、よくウェブ夫妻の『産業民主制』の19世紀のジャンタの問題意識の話をするんですが、歴史を話さない講義ではどう説明するのか難しいと思います。現在の労働組合の政治活動は、昔からやっている共産党支持は理解できますが(私がこの立場であるというわけではありません、念のため)、連合が民主党、民進党をなぜ支持するのかほとんど理解しがたいです。本当は、話はシンプルなんです。自分たちの労働条件をよくするように、それを実現するために働く人を議員として送り出す。この本で立候補した坂さんはまさに自分たちの労働条件をよくするために議員になろうとしたわけです。

この本を読んでも、団体交渉や上部組合とは何かということを説明できるようにはならないでしょう。しかし、なぜ一人ではダメだったのか、なにを解決しようとしたのか、そのためには職場をなぜ超えていく必要があったのか、そして、なぜ立候補までしようとなったのかということを考えることはできます。そして、こうした活動を支えた家族の姿を通じて、家庭における主婦のあり方についても問い直しています。性別役割分業やワーク・ライフ・バランスという言葉で介さずに、誰にとっても重要な家族を考える上でもよい本になっています。労働運動に携わる人だけでなく、多くの人に読んでほしいと思います。

なお、家族関係については、柏木恵子先生の『子どもが育つ条件』岩波新書もお勧めしています。
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