2020年03月26日 (木)
数日前、多様な教育機会を考える会で中田正敏先生のご報告を聞く機会があった。中田先生にはこの研究会でも午前中の読書会でご報告いただいたこともあり、そのときも刺激的だった。今回も議論自体はとても盛り上がって、よい感じになったのだが。。。個人的には、物足りないな、深く切り込めなかったなという感じが残った。
なぜ、そうなのかというと、中田先生は一方でアカデミックな文献も読みつつ、現場での課題を深め、その一方で現場に立てば、そういう舞台裏はあえて見せないというようなこともなさっており、そもそも中田先生の実践とは何なのか、どうアプローチすればよいのか、ということが私には見えないのである。
アカデミックな研究者の書くものであれば、ある程度、系譜探しをすれば、その人の発想の出自も分かる。でも、現場でものを考える人の場合、それはすごく分かりにくい。現場での経験とその刺激になる文献との往来で、しばしば文献同士のつながりなどには関心を持たないからである。アカデミックなものでも、学際的な領域ではこういうことは起こり得るが、それでも中田先生のような場合とは少し違う。系譜探しをするならば、ロシア思想を勉強しなければならないかもしれない。ただ、そこを掘り下げただけでも見えてこない気もする。
中田先生がよく引かれるエンゲストロームを少し勉強しようと思って引っ張り出したんだが、教育といっても心理学、次のFrom Teams to Knotsを読むと、これはどちらかというと、労使関係論がベースになっている領域。ということは、経営学や工場管理とも縁が深い。彼が成人教育の担当部署に所属していることとも関係している。実際、私は当日、わりと労使関係に似てるなあと思って聞いていた(そこがホームグラウンドの一つなので。ってここを読む人はみんな知っているか)。それから、中田先生といくつかのやり取りの感じでは組織論的な造詣も深そうと思ったんだけど、そこらへんはよく分からなかった。私も最近、やってないからなあ。
先生はおそらくアカデミックな背景をもっている人が多くいるので、ご自身の背景的な話も出される報告をなさったのだと思うけれども、では、エンゲストロームを勉強すればそれが分かるかというと、そうはならないだろう。問題は、エンゲストロームなり、なんなりをどのタイミングでどう利用して、そこでどう考え方が深まったのかということである。多くの現場の人は、その実践に比して自分の言葉を十分に持ち合わせないけれども、それはこれだけ博識な中田先生でさえも同じことである。場合によっては労使関係関連については私の方が詳しいこともあるだろう。でも、だから何?という話なのである。問題にすべきなのは、たとえば中田先生にとってエンゲストロームの書いたものがどういうタイミングでアンテナにひっかり、それをどういう風に使ったのかということなのだと思う。その使うときに、エンゲストロームなり他の思想家が意識的、無意識的かを問わず前提としてきたことがどう先生に影響を与えたのか、ということは考察する価値があるだろうが、それは最重要トピックではない。
なんでこんなことを書くかというと、優れた実践の成功事例は「結局、他の人にはマネ(コピー)できないよね」ということになりかねないのだが、その学習プロセスを学ぶことによって、自分の学習プロセスに刺激を与えることは可能だろうと思っている。ただ、アカデミックな研究者というのは、全体を俯瞰するというよりも、自分の問題意識を深める刺激を与えられれば、それで満足というところがあり、しばしばよい研究会というのは、多くの参加者(研究者)がそれぞれの問題意識を深める刺激を与えられた会であったりする。今までの私はわりとそれで良しとしてきて、なんなら研究者ならば、その刺激を受けることが出来ない方が悪い(日ごろからアンテナを立てられていない)と思ってきたのだが、私たちがRED研で目指してきたことは、きっとそういうことだけではダメなんだろうなと思う。今の私の勘では、純粋にアカデミシャンとして楽しめてしまう会は警戒しなくてはというところだろうか。
実践というのは軸を欲するタイミングがあり、それが歴史だったり、思想だったり、何でもよいのだが、知的なものに求められるタイミングがある。他方で、それを全部、忘れなければならないタイミングもある。アカデミックな関心はどうしても前者の側面に注目しがちだと思うが、実はこの両輪、特に両者をスイッチングをしている意識が大事だと思う。ただ、これは実は本人でも分からない。私はたぶん、自分でも意識的に結構、やっているが、それでもいつどうやってと聞かれたら、すぐには分からない。ほぼ感覚でやっていて、意識化するのは難しい。少なくとも他者の力は必要だろう(たとえば、誰かから尋ねられるというようなきっかけ)。ここのところ、もう少し自分で意識して、いろいろ深めていかなければならないなあ。
全然、まとまっていないし、言葉を尽くせていないが、なんとなくモヤっと感はこの文章でも表現できているだろうか。
なぜ、そうなのかというと、中田先生は一方でアカデミックな文献も読みつつ、現場での課題を深め、その一方で現場に立てば、そういう舞台裏はあえて見せないというようなこともなさっており、そもそも中田先生の実践とは何なのか、どうアプローチすればよいのか、ということが私には見えないのである。
アカデミックな研究者の書くものであれば、ある程度、系譜探しをすれば、その人の発想の出自も分かる。でも、現場でものを考える人の場合、それはすごく分かりにくい。現場での経験とその刺激になる文献との往来で、しばしば文献同士のつながりなどには関心を持たないからである。アカデミックなものでも、学際的な領域ではこういうことは起こり得るが、それでも中田先生のような場合とは少し違う。系譜探しをするならば、ロシア思想を勉強しなければならないかもしれない。ただ、そこを掘り下げただけでも見えてこない気もする。
中田先生がよく引かれるエンゲストロームを少し勉強しようと思って引っ張り出したんだが、教育といっても心理学、次のFrom Teams to Knotsを読むと、これはどちらかというと、労使関係論がベースになっている領域。ということは、経営学や工場管理とも縁が深い。彼が成人教育の担当部署に所属していることとも関係している。実際、私は当日、わりと労使関係に似てるなあと思って聞いていた(そこがホームグラウンドの一つなので。ってここを読む人はみんな知っているか)。それから、中田先生といくつかのやり取りの感じでは組織論的な造詣も深そうと思ったんだけど、そこらへんはよく分からなかった。私も最近、やってないからなあ。
先生はおそらくアカデミックな背景をもっている人が多くいるので、ご自身の背景的な話も出される報告をなさったのだと思うけれども、では、エンゲストロームを勉強すればそれが分かるかというと、そうはならないだろう。問題は、エンゲストロームなり、なんなりをどのタイミングでどう利用して、そこでどう考え方が深まったのかということである。多くの現場の人は、その実践に比して自分の言葉を十分に持ち合わせないけれども、それはこれだけ博識な中田先生でさえも同じことである。場合によっては労使関係関連については私の方が詳しいこともあるだろう。でも、だから何?という話なのである。問題にすべきなのは、たとえば中田先生にとってエンゲストロームの書いたものがどういうタイミングでアンテナにひっかり、それをどういう風に使ったのかということなのだと思う。その使うときに、エンゲストロームなり他の思想家が意識的、無意識的かを問わず前提としてきたことがどう先生に影響を与えたのか、ということは考察する価値があるだろうが、それは最重要トピックではない。
なんでこんなことを書くかというと、優れた実践の成功事例は「結局、他の人にはマネ(コピー)できないよね」ということになりかねないのだが、その学習プロセスを学ぶことによって、自分の学習プロセスに刺激を与えることは可能だろうと思っている。ただ、アカデミックな研究者というのは、全体を俯瞰するというよりも、自分の問題意識を深める刺激を与えられれば、それで満足というところがあり、しばしばよい研究会というのは、多くの参加者(研究者)がそれぞれの問題意識を深める刺激を与えられた会であったりする。今までの私はわりとそれで良しとしてきて、なんなら研究者ならば、その刺激を受けることが出来ない方が悪い(日ごろからアンテナを立てられていない)と思ってきたのだが、私たちがRED研で目指してきたことは、きっとそういうことだけではダメなんだろうなと思う。今の私の勘では、純粋にアカデミシャンとして楽しめてしまう会は警戒しなくてはというところだろうか。
実践というのは軸を欲するタイミングがあり、それが歴史だったり、思想だったり、何でもよいのだが、知的なものに求められるタイミングがある。他方で、それを全部、忘れなければならないタイミングもある。アカデミックな関心はどうしても前者の側面に注目しがちだと思うが、実はこの両輪、特に両者をスイッチングをしている意識が大事だと思う。ただ、これは実は本人でも分からない。私はたぶん、自分でも意識的に結構、やっているが、それでもいつどうやってと聞かれたら、すぐには分からない。ほぼ感覚でやっていて、意識化するのは難しい。少なくとも他者の力は必要だろう(たとえば、誰かから尋ねられるというようなきっかけ)。ここのところ、もう少し自分で意識して、いろいろ深めていかなければならないなあ。
全然、まとまっていないし、言葉を尽くせていないが、なんとなくモヤっと感はこの文章でも表現できているだろうか。
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