第二回で共有されている問題意識は、大学の講義に「職業的レリバンス」を持たせるかどうかという点です。

児美川先生は明確に資料の中で「専門教育そのものを”キャリアoriented”にしていくべき」と書かれています。こういう方針はある意味では当然で、児美川先生がキャリアを冠する学部に所属されていることが大きいのではないかと思います。専門とキャリアが一致しているのですから。ただし、そういう外形標準的な問題とは別に、大学の旧来の講義とキャリア・センターの並立的な状況において、キャリア・センターだけにキャリア教育を任せていいのか、という問題意識が出発点にあったことは確認しておく必要があるかもしれません。

その一方で議事録の質疑応答では次のように述べられています。

私の報告の前半でいけば、もっと職業的レリバンスを強めるべきだという話になるはずだが、後半ではむしろ現状認識としてリベラルエデュケーション的なものが必要になっている、としているので、明らかにその間に矛盾があるといえば矛盾があり、自分でもそこは自覚している。すっきりと私自身の中でそこのつながりをつけて考えられている、というよりは、あまりにも弱い部分については確かに改善していくべきだと思うが、同時にそれだけでやっても上手くいかないだろうという実感がある。

この正直な、アンビバレントな感覚は重要かもしれません。キャリア・デザイン学部においては矛盾なく統合できる気もしますが。

なお、この児美川報告を読んで本田さんの『教育の職業的レリバンス』におけるキャリア教育批判のネタ元はこれなんだなと思いました。川喜多先生のキャリア教育批判の話のところなんか。児美川先生は「個人的にちょっと気になるのは,「キャリア教育」のはねのけ方にかかわるスタンスの取り方か」と一言感想を洩らされていますが、私もそうだろうなと感じました。というわけで、児美川報告レジュメと議事録での該当部分と読み比べるのもいいと思います。

久本先生の報告は、制度派の労働経済学者の面目躍如だと思います。制度派的な常識と一般の常識の間のバランス感覚が絶妙ではないかと感じました。論理的には私自身「訓練について」の中で共通する主要論点は出してあります。一つのポイントは、久本先生がドイツを比較対象として念頭に置きながら、就社と就職を分けて論じられている点ですが、理論的に言えば、内部労働市場の二つの型(ジョブ型(クラフト)、メンバーシップ型(会社))との関係に対応します。職業に就くのではなく、会社の一員になる以上、そのときに求められる能力を学校で与えるのは難しい。したがって、論理的必然として学校教育における企業の関与、学校と企業のデュアルシステム、具体的にはインターンシップが重要である。そういう論理運びになります。

しかし、私の聞いたところによると、経産省のインターンシップ予算が削られてしまったみたいです。ジョブマッチングの機能を果たさなかったということなのかな。何れにせよ残念だし、気になるところです。インターンシップを学校と企業の架け橋に使うのであれば、単純にジョブマッチングではなく、技能形成の一つという観点から捉える必要があることを確認したいところです。ただ、インターンシップは久本報告にも書いてありますが、ただ働きの危険もあるので、運用上、難しい問題もあります。もっとも、そういうブラック会社であれば、就職しない方がいいわけですが。

久本報告の中で「完成した高度職業人を育成することが大学教育なのか?どこまでの教育を大学はするべきであり、ど(こ)からは企業に任せるべきかを議論すべきではないか」と問題提起されています。ここは児美川先生と違う立場ではないかと思います。多分、久本先生は実用に耐える職業的レリバンスを学校で与えるのはそもそも無理という考え方が強い気がします(この点は、おわりに参照)。裏から言えば、だからこそ、インターンシップなんだとも理解できるかな。

さて、とりあえず、今回の備忘録シリーズは幕間です。3,4回の議論を読まないと、先に進まないからです。キリがないから全部アップされたら、続きを論じることにしましょう。

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